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みしま365
身近なアートが楽しい!~エクリュの森・みしまプラザホテル 高田博厚 彫刻プロムナード~
まちなかアートプレイスツアー
美術館では作品を静かに観なければ…。おもしろそうな絵もあれば、まったくわからない作品もある。
彫刻にさわってみたいけど、そんなことしたら…
解説をみながら、わかった風に観て歩く、歩き疲れるし、結構窮屈。
あ~あ、やっぱりアートって疲れるかもね。
アート作品に触れる時、こんな風に感じることも。
でも、ちょっとだけアートの世界に浸ってみたいと思うこともありますよね。
三島の街中のアートは案外知られていません。
アート作品を観たり解説を聞くのではなく、参加する人目線でアートに触れることができれば、楽しいかも。
アートプレイスツアースタートです!
ということで、三島のアートプレイスミニツアーを企画しちゃいました。
アートも気軽に楽しんで、作品と隠れたエピソードも聞けちゃう、その間にはお茶する時間もあってと、欲張りアートの楽しみ方をご案内しました。
歩くにはもってこいの少し曇った8月、真夏の午後。
三嶋大社北側に位置するGALLERYエクリュの森スタート。
ここのオーナーは作家を発掘し、もちろん実力に応じてですが、小さなギャラリーから、公立美術館に至るまでアーティストをPRし、発表の場を提供しているギャラリストです。
エクリュの森では、年間を通していくつかの展覧会が開催されています。
今回は、三島から世界に向けて現代アートを発信しようと「MICA2022」展鑑賞。
漆に金属彫刻、ミクストメディア(写真のコラージュと割き織の作品)、平面絵画とそれぞれに手法が違うけど、不思議な調和感!
私たちは出来上がった展示を観るけれど、こういう展示になるには、アーティストとギャラリストでいろいろな工夫や作品の相性など展示の仕方を繰り返し検討した結果なのでしょうね。
展示を観る人とアーティストが対話をしながら、指さしたり、覗き込んだり、ためつすがめつみている光景は「アートを楽しんでいるよ!」と、会場から伝わってくるよう。
三島八小路を歩く
参加した人たちが打ち解けたあたりで、さあ、指で思索する彫刻家と評される高田博厚(たかたひろあつ)の作品群を観にいきましょう、ねこ道の様な道をたどりながらみしまプラザホテルへ。
まずは、少しひなびた感じの下小路に入ります。
ここで、三島八小路をご紹介。
「三島宿は旅籠や本陣が並んでいた東海道の南北両側に細い小路が何本もあり、さまざまな職種の人々が生活を営んでいた。八小路と呼ばれた細小路は特に親しまれた小路で、この名をそらんじて言えることが、三島宿住人の証拠だといわれていたこともあった。八小路とは、桜小路、竹林寺小路、上の小路、下の小路、阿闍梨(あじゃり)小路、金谷小路、菅小路、細小路である」(三島市民ポータルサイトより)
下小路をぬけ、桜小路に。この桜小路は、鎌倉古道とも呼ばれています。
しばらく歩くと右側には、大きな樽の看板の創業1925年の内田酒店。三島の芋(三嶋甘藷)と富士山の湧水で造った三島ブランドの「チットラッツ」を始め、静岡の銘酒ならほとんど揃うという酒屋さんの前を通り過ぎます(写真は通り過ぎてからパチリ)。
向かい側には、界隈で評判のフランス料理ターブル・ド・クドウの菓子部。奥にレストランがあります。
ちょっと甘いものがほしい時にオススメ。レーズンサンドは、とても人気‼
ぶらぶら歩いていると、御殿川にかかる赤橋を渡った左手にある讃岐うどん「まるかつ」が現れます。このお店は、こだわり自家製麺で化学調味料不使。季節のてんぷらと一緒にどうぞ!
まるかつを過ぎ、小路から、さらに細い小道を御殿川沿いに行き、旧東海道に出ます。
目の前には、みしまプラザホテルギャラリー。
《指で思索する彫刻家高田博厚ってどんな人?》
ギャラリーの主、高田博厚は1900年石川県七尾生まれ。白樺派の高村光太郎をはじめとする文学者や画家等と交流し、31歳で渡仏し、57歳で帰国した彫刻家。
フランス在住時は、超大物の文学者、哲学者、芸術家と交流し、当時は日本を代表する芸術家として知られていたそうです。
かの有名なロマン・ロランからは「タカタは精神を形作る本当の芸術家で、彼は指で思索する彫刻家」と評され、彼やガンジーの肖像彫刻作品を制作します。
でも、彫刻家や美術評論家等をのぞいて国内ではほとんど知られていない彫刻家。
どうして知る人も少ないマイナーな彫刻家「高田博厚プロムナード」があるのでしょうか?不思議じゃない?
《高田博厚作品との対話》
今回の街中アートのハイライトは、高田博厚作品とみしまプラザホテルの出逢いのエピソードや物語を室伏勝宏会長にお話を直接聞くこと!!
でも…、まずは自由に作品鑑賞から。
フランスの彫刻家ロダンやマイヨールの影響を受けたと言われる作品群、少し雰囲気がピリッとする感じ。
しゃがみこんで作品を覗き込む人も、作品の真正面からまるで対峙しているような見方をする人も…。
ここでも作品の前に数人が集まり、なにやら話し込んでいます。どんな話題かわかりませんが、良い光景。すっかり美術ファンのよう。
柔らかい照明の中で眼光鋭いロランやガンジーを鑑賞しても、美術館のようなし~んとした雰囲気とはだいぶ違います。
さあ、さあ、お待ちどうさま。ハイライトタイムです。
アートプレイスツアーのために、とっておきの素敵な部屋をご用意していただきました。
ガラス作品をいっぱい飾った部屋、ガラス越しに参加者の顔、なんだか、幻想的な部屋に早変わり。
《鮮やかなモンブランは三島甘藷》
運ばれてくる三島甘藷の生絞りモンブラン、大きい!黄色のモンブラン、きれい!
三島甘藷の自然の甘味を活かしたモンブラン、大きくても、ぺろりと、完食できます。オススメです。
モンブラン・ドリンク付き(税込み)1500円
午後2時からのご注文可能(同ホテル1階 Meyciにて)
室伏さんは、さすがにサービス業のプロ、全員にモンブランとコーヒーが配られたころ合いを見図らい、作品との出会いや、当時のホテルのお話など、記憶の糸を紡ぐように何本もの糸が縦横に紡がれていきます。
皆さん、室伏さんのお話しに引き込まれて、モンブランを忘れている~、
と、誰かが、モンブランにフォークを入れた。小さくカシャッと、室内に広がるかすかな音。
みんな、あっ、モンブランを食べなきゃと、いつの間にか、アットホームな感じに…。
《高田先生との出逢い》
高田博厚との出逢い、彼の突然の死により、予定していた個展を回顧展に変え、さらに作品を譲り受けるに至ったエピソードや、その時のやり取りが…
~高田夫人が「室伏さん、プラザホテルに作品を置きませんか?」と、予想もしていないことをおっしゃるのです。突然の提案に驚きました。当時このホテルは、まだまだ設備投資をしている時期で、ギャラリーはできたものの、高田先生の作品をコレクションするような余裕はありませんでした。夫人が、ご自身の言葉を補うように「いいのよ。鋳造代だけで」とおっしゃるのです。僕はどういうことかわかりませんでした。同行した高田先生のお弟子さん、増島画伯から「いい話だ」とアイコンタクトをされました。僕はこの時コレクションすることを決めました~
このお話、とてもインパクトが強かった。
さらに、さらに、室伏さんのお話しの真骨頂
~鎌倉のアトリエから回顧展の作品を運ぶのに、夫人が「ホテルだから毛布がたくさんあるでしょ。毛布に一つずつくるんで作品を持っていきなさいよ」とおっしゃってくれ、夫人の言葉に甘えてかかえてきました~
室伏さんは、ガンジーを毛布でクルクル巻にし、自分で抱きかかえて車で運んできたのです。
その場の様子と、何としても最高の回顧展をやるんだという決意が伝わってくるようで、周りからは、おお~、わぁ、すごいと会場が湧きたちました。
室伏さんは、また普段は話さないけれどと前置きをして、
~ホテルの経営を考える時「こんな工夫をしたら高田先生が喜んでくれるだろうか?これはどうだろうか?」と作品と対話をしながら多くの人に愛されるホテルを目指している~
こんなお話しもしてくださいました。
改めて、作品とコレクターの絆を強く感じました。
アートツアーだからこそお聞きできた話かもしれない、スゴイ話だった!
こういう感動的な裏話を聞くと、物言わぬ彫刻作品が「どうだ!」と言っているよう。
まちのアートプレイスがなんだか誇らしく思えてきました。
ツアーのお土産に、高田博厚回顧展図録と30周年記念誌をいただきました。
《高田博厚の作品に出逢う機会があったら》
手前みそだけど、良かったなぁ。高田博厚(通の人は、タカタハッコウというらしい)の作品、いろんな人にみてほしい。
みしまプラザホテルの「高田博厚プロムナード」はいつでも開かれています。
さらに、みしまプラザホテルのロビーにも高田博厚作品「ラ・カテドラル」が展示されています。
この作品は、彼が37歳の時の作品ですが、お近くに来たら是非ご覧あれ。
彼は、ロダンや西洋美術に学ぼうと渡仏し、ロダンの作品を何度も観て、ロダンがフランスのカテドラル(大聖堂)を案内した指導書を片手にゴチック建築の粋を観て回ったそう。
《高田の著書「フランスから」》
ロダンがフランスの「カテドラル」の中で、ランスの寺を「跪いて祈る女」と云っているのは、勿論君は知っている。僕がはじめてランスの寺で受けた感動は、後年ギリシアのシシリアで受けたものと同質である。春の小雨の降る日、細い道に入って右にまがったら、不意に目の前に、雲の流れる濡れた空の下に、膝を折り、胸を張り、合掌し天を仰いで若い女が祈っていた。ランスのカテドラルが…。この感じは後で飾った形容でも、先に読んだロダンの記憶でもなかった。咄嗟に「生きているもの」が打った。ぬるい雨のしづくが頬を伝い流れるのに委ねて、僕は茫然と立ちすくんでいた。(作者)
ロダンにも「カテドラル」という手の作品がある。ロダン晩年の傑作といわれているそうな。右手がふたつ重なっているんですよね。
高田の《ラ・カテドラル》は上半身の首から上部と両腕のないトルソ。
真横から見ると、天を仰いで、祈っているようにも…。
三島に来たら、ラ・カテドラルを見逃がさないでほしい。
アートツアーでは、室伏さんの了解を得て、みんなでちょっとだけ《ラ・カテドラル》に触らせてもらいましたぁ。
《三島のまちなかアートも楽しんで》
身近なアートツアーをこれからも企画していこうと思います。機会があれば、是非ご参加を。また、三島のちっちゃなギャラリーがそれぞれの個性をきらりと光らせています。
みしまのアートもまちなか散歩に加えて楽しんでくださいね。
行かれるときには、ホームページ等で再確認をお願いします。
まちなかギャラリー|三島市民ポータル (mishima-life.jp)
長々とお付き合いくださった方、ありがとうございました。
《
🟡MICA(Mishima International Contemporary Artshow)2022展
8月15日から27日までは予約制 GALLERYエクリュの森・三島
- 問合せ GALLERYエクリュの森 田村燿子(08030842321)info@ecru-no-mori.jp
本展は、三島発の現代美術のArt Showとして3回目を迎える美術展覧会です。今回は、海外でも活躍している作家を含む4名の作家が揃います。各作家は「三島で行う展覧会」ということを意識し、それぞれのアプローチで臨みます。
このページで紹介した場所
〒411-0035 静岡県三島市大宮町2丁目16−21 伸和ビル1F
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●みしまプラザホテル
〒411-0855 静岡県三島市本町14−31
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